2008年3月12日水曜日

響楽オーケストラのみなさんへ/松岡貴史


今回の「響楽」で、オーケストラのみなさんには大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。5曲もの初演、大変だったろうと思います。
 大変なことを、みんなで楽しみながらやるんだという、若くて有能で謙虚なみなさんの意欲と、同じ釜の飯的、運命共同体的連帯感には、いつも何か引き込まれるような魅力を感じていました。また、このような出会いの場を設定された松尾さん、夏田さんや、現音の竹田さんたちの熱い思いを、こまやかな配慮の行き届いた連絡や段取りに、私はすでに感じ取っておりました。
 芸術監督の三枝さんが「大衆性は?」という質問をされていましたが、まずは演奏者と作曲者が心を通わせ、曲の持ち味を十分に引き出し楽しんで演奏できることが、聴衆に何かを投げかける第一歩だと思います。現代音楽かどうかではなくて、実際、いい曲、いい演奏は、子どもや素人にも分かるのです。そういった意味で、今回の取り組みは、聴衆に何かを投げかける、という下地は十分だったと思います。皆さんとの心の通い合いがあって、実に気持ちのよい、幸せな体験となりました。
 リハーサルでは、高嶋さん、小林さん、山本さん、水野さんの作品がどんどん仕上がっていくのを、自分のことのようにとても嬉しく拝聴していました。私の作品《Melos Pneumatos》は、弦楽器が細かくdivisiしていて、全貌が見えてくるのに時間がかかりましたね。しかし3月1日のリハでは、(私自身も、テンポを見直すなどいっぱい準備をしてきましたが、)みなさんとてもよく準備されていて、ニュアンスや形がハッキリ見えてきて、その変貌ぶりに感動しました。管楽器や打楽器の音色が冴え、divisiされた弦楽器が気(Pneuma)を感じさせ、glissanndoの動きのしなやかさ(Melos)が息づきはじめ、作品から、ほのかな色彩、色気が感じられるようになりました。そして本番では、まさにMelos Pneumatosの世界がそこにありました。曲自体は、まだまだ改良しなければならないことがたくさんありますが、演奏は、大変すばらしいもので、私としては大満足、とても幸せな時間でした。当日、みなさん一人一人にお礼を言いたかったのですが、時間がなくそのままになってしまい、残念に思っておりました。
 聴きにきてくれた人たちからも、「ずっと続いてほしいような心地よい時間だった。」「宇宙とか太古とか、何かが起ころうとする前の次元のようなビッグなものが、体の中でも感じられた。」「感情以前の陶酔感をもった。」などという声が続々と届いています。
 楽譜から音楽を見透し、いつも的確な指示を出されていた指揮の松尾さん、私たちには優しく、オーケストラをしっかりリードしてくださったコンミスの甲斐史子さん、そして期待に応えてすばらしい演奏をしてくださったオーケストラのみなさんには、いくら感謝してもしきれません。
 みなさんは、今後また新しい作品の演奏に取り組まれることと思います。同時代の作品をともに生み出す喜びを持ち続けていただければ嬉しく思います。さらなるご活躍をお祈りするとともに、またどこかでご一緒できる日を楽しみにしています。
松岡貴史

これに関わった皆さんとの心の通い合いがあって、実に気持ちのよい、幸せな体験となりました。
私の曲の演奏も、おかげさまで、音の間から自然な色気が感じられるような、とても魅力的なものになりました。オーケストラには不慣れな私でしたが、また書きたいという思いを強くもちました。
本当に、ありがとうございました。

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