2008年3月21日金曜日

オペラ・プロジェクトII:エピローグ「“赤ずきん”は眠りの森に…」


15日、「オペラ・プロジェクトII」の舞台が終わりました。会場にお越し下さった方もそうでない方も、「赤ずきん」の旅路を見守って下さり心より感謝申し上げます。
さて、一週間経とうとする今、作品の中のあれこれに想いを致す時間を過ごしておりますが、エクリチュールの細部をはじめとする大幅な改訂作業を行わねばならない必要性を感じ始めております。
そんな訳で、「赤ずきん」はしばらくの間“眠りの森”に旅立つ事になりました。
再び皆様にお会いする時には、更にパワーアップ(!)した姿で現れてくれる事でしょう。
その日まで、どうぞ楽しみにお待ち下さい。
感謝とともに。
三枝木宏行
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皆さん、いつもご親切にありがとう。
でも私、今はご用事があるの。
これから“眠りの森”でしばらくのお休みをいただきます。
元気を120パーセント充電して、また皆さんの前に戻ってきたいと思います。
あ、因みにお婆様のお家は、今は工事中みたい。
いらっしゃっても何もないんじゃないかしら…
お目覚めの時間… それは多分、作者の父様とみまかられた父様がご存知のはずです。
だから、今は起こさないでね。(^_^)
それでは、おやすみなさい。
もう一度、ご親切にありがとう。
赤ずきん

2008年3月12日水曜日

響楽オーケストラのみなさんへ/松岡貴史


今回の「響楽」で、オーケストラのみなさんには大変お世話になりました。心より感謝申し上げます。5曲もの初演、大変だったろうと思います。
 大変なことを、みんなで楽しみながらやるんだという、若くて有能で謙虚なみなさんの意欲と、同じ釜の飯的、運命共同体的連帯感には、いつも何か引き込まれるような魅力を感じていました。また、このような出会いの場を設定された松尾さん、夏田さんや、現音の竹田さんたちの熱い思いを、こまやかな配慮の行き届いた連絡や段取りに、私はすでに感じ取っておりました。
 芸術監督の三枝さんが「大衆性は?」という質問をされていましたが、まずは演奏者と作曲者が心を通わせ、曲の持ち味を十分に引き出し楽しんで演奏できることが、聴衆に何かを投げかける第一歩だと思います。現代音楽かどうかではなくて、実際、いい曲、いい演奏は、子どもや素人にも分かるのです。そういった意味で、今回の取り組みは、聴衆に何かを投げかける、という下地は十分だったと思います。皆さんとの心の通い合いがあって、実に気持ちのよい、幸せな体験となりました。
 リハーサルでは、高嶋さん、小林さん、山本さん、水野さんの作品がどんどん仕上がっていくのを、自分のことのようにとても嬉しく拝聴していました。私の作品《Melos Pneumatos》は、弦楽器が細かくdivisiしていて、全貌が見えてくるのに時間がかかりましたね。しかし3月1日のリハでは、(私自身も、テンポを見直すなどいっぱい準備をしてきましたが、)みなさんとてもよく準備されていて、ニュアンスや形がハッキリ見えてきて、その変貌ぶりに感動しました。管楽器や打楽器の音色が冴え、divisiされた弦楽器が気(Pneuma)を感じさせ、glissanndoの動きのしなやかさ(Melos)が息づきはじめ、作品から、ほのかな色彩、色気が感じられるようになりました。そして本番では、まさにMelos Pneumatosの世界がそこにありました。曲自体は、まだまだ改良しなければならないことがたくさんありますが、演奏は、大変すばらしいもので、私としては大満足、とても幸せな時間でした。当日、みなさん一人一人にお礼を言いたかったのですが、時間がなくそのままになってしまい、残念に思っておりました。
 聴きにきてくれた人たちからも、「ずっと続いてほしいような心地よい時間だった。」「宇宙とか太古とか、何かが起ころうとする前の次元のようなビッグなものが、体の中でも感じられた。」「感情以前の陶酔感をもった。」などという声が続々と届いています。
 楽譜から音楽を見透し、いつも的確な指示を出されていた指揮の松尾さん、私たちには優しく、オーケストラをしっかりリードしてくださったコンミスの甲斐史子さん、そして期待に応えてすばらしい演奏をしてくださったオーケストラのみなさんには、いくら感謝してもしきれません。
 みなさんは、今後また新しい作品の演奏に取り組まれることと思います。同時代の作品をともに生み出す喜びを持ち続けていただければ嬉しく思います。さらなるご活躍をお祈りするとともに、またどこかでご一緒できる日を楽しみにしています。
松岡貴史

これに関わった皆さんとの心の通い合いがあって、実に気持ちのよい、幸せな体験となりました。
私の曲の演奏も、おかげさまで、音の間から自然な色気が感じられるような、とても魅力的なものになりました。オーケストラには不慣れな私でしたが、また書きたいという思いを強くもちました。
本当に、ありがとうございました。

2008年3月11日火曜日

意志の上にも“30年”


「世界に開く窓」〜ISCM“世界音楽の日々”を中心に〜日本からの発信

《弦楽四重奏曲》出品/坪能克裕
 国際現代音楽協会(ISCM)主催の音楽祭(世界音楽の日々)は、毎年加盟国が持ち回りで開催することになっている。日本も2001年に横浜で開催した。世界の最前線の音楽と智恵が集まってくる。
 作品の参加に限らず、一週間でも“見聞の旅”に出かけよう!・・・航空券+宿泊費+旅の調度+食費からお土産=ん十万円は掛かる・・・
 一年に一日だけだが東京でも開催され続けてきている。それもチケット代は一夜3〜4千円で。全てカバーされているわけでは無いが、もう30年も続いている。それが「世界に開く窓」である。現音の“奇蹟”だ。こんなにお得で凄い企画は無い!
 今年も3月7日に、すみだトリフォニーホール(小)で開催された。開かれた窓からの見聞は、ウワサや専門家の価値判断では分からない“迫力・説得力”があった。そしてそこではISCMの歴史も、若い演奏家の創造も、現代音楽の可能性も感じ取れるスペースになっていた。
 決して満席ではなかったが、しかし当日の参集者はマイノリティとは異なる“開く”世界を体感することができた。
 来年もある。31年目以降の“春”も楽しみにしていていい。

3月7日「世界に開く窓」の公演写真をアップしました。
左上:坪能克裕/弦楽四重奏曲
右上:福井とも子/シュラックリヒト
左下:外山道子/やまとうた
右下:松平頼曉/チューバのためのシミュレーション

「響楽II」


「響楽II」で芸術に大衆性が必要か?の司会者の問いに,1人くらい「芸術は大衆性とは無縁だ」と言い切った作家がいてもよかったのにね.
大衆性があるのは多数派からの支持があるということしょ.
クラシック音楽そのものが,日本では大衆性を持っていないではないか.オーケストラの運営がどこでも非常にキツイなどはその一例です.その中の「現代音楽」少数派の中の更に少数派.
分かり易さ...ベートーベン晩年の弦楽四重奏曲やピアノソナタは,果たして分かり易いだろうか.調性があったって分かり難いものは沢山あるよね.他方調性が無い能楽の音楽はそれ自体魅力あります.日本の伝統に西洋の音楽理論を当てはめることは無意味だけど.
ある種のロックや,ディスコ音楽は調性はあまり感じられないけれど,大衆の支持はあります.ビート感が売りだからかな.
「現代音楽」こんな分類はもうやめて新しい用語を考案した方がイイと思いますが,「20世紀後半のスタイルの音楽」が分かり難いのは,聴衆は感じようと思って音楽を聴きたいのに,考えさせる音楽の供給となったからでしょう.
孤の存在である人間の精神活動の表現が芸術であるから,多数派を目指すのはさっさと諦めよう.この芸術の世界に入った以上,孤独,孤立を友とし,無理解と闘う覚悟を持ち,新たな航海に出ようではありませんか.
持続性のある感動を持つ作品は,その作家の精神活動が活発な証拠です.
遠藤雅夫

2008年3月9日日曜日

オペラ・プロジェクトII:「赤ずきん」トリビア(2)


m(_ _)m ようこそのお運びで有り難く存じます。
さて、ご高覧(?)頂いております『「赤ずきん」トリビア』。本日は第2回、第4景から終景までの4問でございます。
【第4問】
第4景で赤ずきんは警察の尋問を受けます。その時、彼女が「知り合いではないか」と疑われた歴史上の人物の名前は?
【第5問】
第5景の台詞の中で、戦後ヒットしたあるドラマの題名がふと聞こえます(そのドラマの話をしているのではありません)。それは次のうちどれでしょう。
(1)鐘の鳴る丘
(2)君の名は
(3)向こう三軒両隣
(4)赤胴鈴之助
(5)笛吹童子
【第6問】
第6景の音楽の問題。この情景の中ほどで、指揮者がある物を叩き鳴らします。その回数は?
【第7問】
同じく音楽の問題。第7景終盤近くで、赤ずきんはグレゴリオ聖歌のある一節を口ずさみます。その題名は?
(1)Dies irae
(2)Victimae Paschali
(3)Stabat Mater
(4)Chorus angelorum
(5)In paradisum
答えは15日の本番舞台にてご確認を。
三枝木宏行

2008年3月7日金曜日

すばらしい演奏をありがとう/水野みか子


響楽オーケストラ2008の皆様
先日の「響楽II」では本当にありがとうございました。
皆様の真摯な姿勢でのご質問やご意見は、作曲する身にとって様々なヒントを与えてくれるものでした。疑問をすなおにぶつけていただいたおかげで、こちらもフランクな気持ちでコニュニケーションすることができて、その結果が、本番でのようなすばらしい演奏につながったのだと思います。
現代音楽の世界には予測できない困難もあると思いますが、今後もぜひ演奏に意欲的に関わっていただけるよう切に望みます。
もちろん現代音楽以外でのご活躍も、強くお祈り申し上げます。

オペラ・プロジェクトII:「赤ずきん」トリビア(1)


毎度の登場でお眼汚しでございますが… 本日の記事は趣向を変えて、作品そのもののお話。
実験的作品はともかくとして、通常オペラというものは、ある筋書きに沿って展開する「お芝居」の要素が強い——それは皆さんもご存知の通り。今回の「赤ずきん」とてその例外ではございません。
そこで、本日は作品の内容についてのクイズ、題して『「赤ずきん」トリビア』。
「まだ観てないから答えられない」…?
そこはそれ、皆さんの想像力を働かせて気軽にお楽しみ下さい。
答え合わせは当日の公演という事で。
作品は7つの情景で構成されています。
出題は各情景につき1問、本日は第1〜3景について。
【第1問】
第1景の終わり頃、赤ずきんの台詞に対して、影の声が合いの手を入れます。その言葉は次のうちどれでしょう。
(1)渡る世間に鬼はなし
(2)笑う門には福来たる
(3)旅は道連れ世は情け
(4)喉元過ぎれば熱さ忘るる
(5)鬼も十八、番茶も出花
【第2問】
第2景で、ある老婆から鏡を渡された赤ずきん。その説明を聞いて発した彼女の言葉は?
(1)易者さんみたい
(2)お婆さんみたい
(3)美容師さんみたい
(4)私の顔を見たい
(5)私の未来を見たい
【第3問】
第3景で見知らぬ駅舎から当て所なく歩く赤ずきん。お父さんの想い出を語るうちに、家であった出来事を思い出します。その話の中で、彼女の家に届いたという物は? そしてその数はいくつ?
三枝木宏行

2008年3月6日木曜日

オペラの稽古、3月2日のレポート

演出家、作曲家がそろった状態では初めての稽古になりました。指揮者の松尾先生、事務局長佐藤昌弘先生不在という事で、私が指揮をするかもしれないと思いつつ臨んだのだが、松平さんとピアノの藤田さんの息が合っているというのでしょうか、指揮者なしでも、十分舞台稽古になるのでした。私は何をしていたかというと、ちょっとした機械操作を。詳しくは本番のお楽しみなのですが。
 オペラの稽古自体が、あまり経験のない事なので、自分の作品がどうのこうのというより、演出家と歌い手のやり取り、そこに作曲家も加わるのですが、そのやり取りが、ここから何かが生まれてくる!みたいなエネルギーがあってワクワクします。殆どすべてを背負うただ一人の歌い手にとっては、とても過酷な状況にあると思えるのですが、演出家の要求に次々に応えて、短い時間の間に全体像を作る事ができました。
 オケ合わせや、実際の会場でどうなるかなど、まだまだ問題がありますが、確実に進展のあった1日でした。
(門脇治/「ボルヘスの時間」作曲者

遅ればせながら、上記犬の写真は、勝手ながらイメージ(事務局員iutの)を貼らせていただきました。
でも、ボルヘス君はどんな犬だろう… この主人の元にいる犬は…

オペラ・プロジェクトII:各作品のイメージポスター

「各作品の単独ポスターがあったらどんな感じになるかなぁ…」と思い、先日試しに作ってみました。
「ボルヘス」はリハで聴いた音楽の印象をイメージ化してみました。「赤ずきん」の背景イラストは、作品構想時に何枚か描いたコンテ絵からの流用です。
ひょんな事から会場掲示ポスターに使われることになりました(トップページに掲載)。公演の雰囲気づくりに役立てれば嬉しいのですが…
三枝木宏行

2008年3月4日火曜日

オペラ・プロジェクトII:アンサンブル合わせと芝居稽古

「あと十日」…期待と不安が入り混じり、オペラの舞台づくりは進められています。
2月28日はアンサンブルのメンバーと初顔合わせ。背景音楽はモノクロームの世界からポリクロームへと華やかさを増してゆきます。「ボルヘス」のアンサンブル合わせはなかなかの難物ですが、これを皆さん演奏してしまうのですから脱帽です。
さて、当然ピアノだけでは気づかない問題点なども見つかります。特にパート譜のミスプリ。隅々までチェックしたはずなんだけど…すみません、アンサンブルの皆様(汗)。
29日は通常の歌合わせでしたが、「赤ずきん」ではヴォーカル・シンセサイザーのパートを加えての初練習。今日びのヴォコーダは、リアルにかなり近い合唱の音色をシミュレートでき、コーラスが入ると俄然音楽に奥行きが出てきます(もちろん一昔前の「ロボ声」にも愛着はありますが)。
3月1日は演出の飯塚励生さんのもと演技の練習。この日は「赤ずきん」の稽古で、主人公の動きやちょっとした仕草などを、その時の心情などを解釈しつつ肉付けしてゆきます。自分で書いた台本なのですが、第三者の視点が加わると、自分でも気づかなかった物語の一面が見えてくるものです。その内容が単に“個人の発言”に留まらないグローバルなメッセージへと拡げられてゆく事に感慨を覚えます。練習の終わりに、飯塚さんと歌の新藤さんの記念写真を一枚。なぜ白衣?…それは舞台のお楽しみ。
三枝木宏行