2009年11月14日土曜日

パロ谷の春の祝祭に


「パロ谷の春の祝祭に」はブータン王国の「 祝祭(ツェチュ)音楽」と「民間に伝承する芸能」に着想を得たものです。私がはじめてブータンの音楽にふれたのは、ブータンの民族伝統音楽団「プンツォ・ダヤン」の来日演奏会においてです。
 彼らの手による伝統音楽、日々の暮らしに根ざした踊り、演奏、歌、それらは私がこれまでに体験したことのないすばらしいものでした。そして、それは私の音楽世界がおおきく開かれた瞬間でもありました。
 私はブータンという国に行ったことがありません。そこで生活している人々がどんな風に会話をするのか?気候や風土は?この来日演奏会での体験以外のことは書物を読み、予測を膨らませて想像の中で作品をつくるより他なかったのです。
 ただ、彼らの演じる「美しい自然の歌」や「労働の歌」も「祝祭の踊り」もすべては人々の生活や宗教観と深く結びついていて、彼らも私たちと同じように厳しい現実の生活のなかで喜び、悩み、苦しみ、その喜びも悲しみも自らが演じる芸能に投影させ、日々を生きているのだということを強く感じるのです。
 手探りの中で作った作品ですが、このたびこのように発表の機会をいただけることはほんとうに幸せなことです。また、各関係者の皆様への感謝はたとえようもありません。この場をお借りし、深く御礼申し上げます。
 そして、この曲は、短いながらも充実したリハーサルの中で演奏者の皆様からいただいたさまざまなアイデアを盛り込み、息が吹き込まれ、完成に至ったものです。数々のご指摘、助言、ご意見は私にとっての大きな財産です。ほんとうにありがとうございました。
 「現代の音楽」と「人間性」。これからも自分に問い続け、自らの音楽に投影していきたいと思います。
(写真はリハーサル会場付近の高円寺の巨木です。)

現音作曲新人賞入選:内野裕樹

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