2009年11月24日火曜日

現音・今昔(7)子どもたちの現代音楽による「奇蹟」— II

ミレニアム企画が取り沙汰される頃、東京近郊の市民ホールでは“クリスマス・コンサート”が開催された。その内容は市民の日頃の成果を、全体のコンセプトを基にプロのオーケストラとともに発表する、という内容だった。
 そこに地元の小学校5年1組の児童が、自分たちの“オリジナル”作品を発表することが加わった。その学校は過去にロンドンシンフォニエッタの「音楽教育プログラム」が入った経験があったが、5年生にとっては初めてだった。
 クリスマスの一ヶ月前に“音楽づくりワークショップ・リーダー”が一回90分児童と“音楽あそび”をして、音楽の“仕組み”を伝えた。楽器は音楽室にある小物打楽器・リコーダーと、身体を叩く“ボディークラッピング”だけ。
 その後、子どもたちは“作戦会議”を重ね、音楽教師・担任教師を頼らず、自分たちで秘密の音楽を作り始めた。
 本番直前のリハーサルで、初めて教師を含むスタッフ一同は、子どもが何を作ってきたか知ることになった。舞台一杯に7つ程に分かれたチームが同時に“花火”のように、ボディーを叩き、リコーダーを吹き、ダンスの要素を加えて表現していた。それを見て指揮者と(オケピットの)オーケストラは、その世界が生かされるようなコラボレーションを同時につくり始めた。
 ゲネプロで、初めて分かる創造世界が出来上がった。現代音楽の手法と表現を借りてはいるが、子どもが考え・つくり・表現することを、プロがサポートして協働する世界が初めて誕生した瞬間だった。
 圧倒される音と表現の渦に、作品が終わっても聴衆は拍手することさえ忘れていた・・・
現代音楽には、子どもたちにとって未知の表現の可能性を秘めている証拠が、そこにはあった。
坪能克裕

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