2009年11月4日水曜日

テクノロジーの発展と電子音楽

今年の8月、カナダのモントリオールで開催された国際電子音楽学会(ICMC)に行ってきました。
 私にとって初めての学会だったICMC2009は、一週間かなりタイトなスケジュールで行われました。午前9時から午後4時ぐらいまでは論文発表で、午後の5時からはコンサートホールでコンサート、また夜9時からコンサートがありました。たぶん何年間分の電子音楽コンサートに行って来たのではないかと思います。
 論文発表はかなり専門的なものが多かったので、私はリスニングルームでループ再生されていたテープ音楽をよく聴きに行きました。私の曲もそこで再生されましたが、学会の会場のあっちこっちで、先ほど聴いたばかりの曲の作曲家に会えることはとても新鮮でした。
 一番印象的だったのはキーノートスピーカであったポール・ランスキー(Paul Lansky)の講義でした。彼はプリンストン大学の教授で、何十年も電子音楽の作曲を行ってこられた作曲家ですが、講義の内容はなんと、彼はもう電子音楽の作曲はやめて、器楽のための作曲しかしないということでした。彼は電子音楽の先駆者として、テクノロジーがあまり発展してない時から色々な工夫を重ね、作曲をしてきました。しかし技術の進歩によって彼がとても苦労して出来たことが、最近はとても簡単にできるようになったことに空しさを感じたときがあったそうです。
 初めての電子音楽の学会でそのような話を聞いたことにアイロニーを感じましたが、その御陰で様々なことを考えさせられた学会の初体験になったと思います。

電楽IV出品者:キム・ニコル
2009年11月6日(金)19時開演
●電楽IV〜ライヴエレクトロニクス過去形/未来形
キム・ニコル/無声映画「真夏の夜の夢」による箏とピアノのライブ・エレクトロニクス「Dream away the time」(2009/初演)
吉川あいみ(生田流箏) 山本清香(ピアノ) キム・ニコル(コンピュータ)

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