2010年11月29日月曜日

JSCMユース・チェンバー・オーケストラ〜 指揮:安良岡章夫

湯浅譲二作曲《7人の奏者のためのプロジェクションズ》

1955年に発表、同年7月12日「実験工房室内楽作品演奏会」にて初演。 
私は30年以上前、学生時代ににこの作品を録音で聴き、
その響きに心を奪われた記憶がある。
そこにはある「共感」するものがあったと記憶している。
それは当時、能を中心とした日本の伝統音楽に熱中していたため、
この作品の響きに日本的なものを見出したのであった。

湯浅先生は小学生の頃、ピアノと共に宝生流の謡を稽古された。
高著「人生の半ば」によればこの作品の最終楽章は、
能の囃子から序の舞、大ベシ(天狗の出の囃子)等が
ゼスチュア的なパターンとして引用されているとのこと。
そして「三ツ地」というリズムパターンに言及され、
この楽章の時間構造について述べられている。
また、第二楽章や第五、第六楽章の静的な音世界は、
「非連続な、流れないスタティックな時間」(「人生の半ば」による)を強く感じさせ、 
これらは西洋音楽とは異なるものが感じられる。

しかし、12音技法で書かれたこの作品の素晴らしさは、
日本的な素材を含みながら、その効果を狙うなどという次元とは無縁の、
極めて純度の高い、厳しい音の世界である。
リハーサルの初日に、第一楽章の音を出した途端に、
失礼ながらその後の湯浅先生の作品を多く聴いてきたとは言えない私ではあるが、
その音色感にすっかり魅了されてしまった。
それは演奏の現場に居てはじめて分かるものかも知れない。
それは7人の若い奏者の面々も感じられたと思う。
ともかく今回、演奏の機会を頂き真に光栄である。

さて、作品のことについて述べるのはこの位で止めようと思う。
聴衆の皆さんがどのようにお聴きになるか、楽しみである。
いや、演奏する側も聴衆としての耳を持たねばなるまい。
そのことを世阿弥は「離見の見」と記しているのだが。

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