2010年11月29日月曜日

室内オーケストラの新地平〜作曲:高嶋みどり



高嶋みどり作曲《Baby  Universe  II 》


昨年、日本的情念の非常に濃厚な <室内歌劇 金剛蔵王> を作曲した。
その反動 というわけでもないが、この <Baby  Universe  II >では、湿度のない世界、ミクロの<点>しかない世界、素粒子が浮遊しているような(素粒子が何かよくわからないのだが)世界、・・・・ を描いてみた。地獄的な暗黒ではなく、何もない暗黒、空間もあるのかどうかすらわからない、何を持ってその輪郭とするのかもわからない <宇宙>の 獏とした無機的な世界、けれど確実に<ある>らしい世界 ・・・・世界と言っていいかどうかわからない、空間と言っていいのかもわからない、・・・だから宇宙と言うのかも知れない・・・ 何か<もの>のような あるような ないような <もの> でないような・・・・、曲です。ともかくも 在る 世界・・・・を書いた・・・ 曲、です。


かつてない構造への挑戦も試みてみたいと思ったが、音がひとたびなり始めると必ず形が生まれてしまうし、在る、という事は 形を持ってしまうわけだから、形の見えない宇宙にもこの曲にも結局形はあるわけで、・・・だから・・・だから何なんだ・・・などと、支離滅裂な事を考えながら作曲した 曲です。


そして、始めから目をこらして聴いていただきたい曲でもあります。
始めに奏でられるべき 音楽は はたして 何だったのか、耳をこらして 両眼を見開いて、聴いていただきたいと思います。


弦楽器の弓を縦に運弓する奏法や、sul tastoのfによる(pではない!!)奏法での音色も多様した。Flや Fagの 特殊奏法、ピアノコンチェルトのようなピアノの活躍等、演奏家の名人芸も見せ場である。


・・・・というような曲です。大雑把に言えば全体を通して、無機的、金属的、極小の点の集合であるように非常に短い音 で形作られている曲 と言えるかもしれない。


後半で、美しいがはかなくて、憂いがあるようで無機的な印象的なフレーズが奏でられる。 これが何なのかは、聴衆の皆様の想像力にお任せしたいと思う。


・・・かつて私が書いた曲の中で最も音量の少さい曲、でもあります。
スコアはかなり<真っ黒>なのですが。
随分タイギョウに演奏している様なのに 微かにしか音が聞こえてこなかったり、真っ黒なスコアなのに、みんなで演奏しているのに・・・・聴こえなかったり・・・・そんなトリックアートのような世界でもあります。

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