2010年7月7日水曜日

EPCoMその2〜会員:松尾祐孝


皆さん、EPCoMってご存知ですか。Educational Program of Contemporary Musicの頭文字で、当協会の現代音楽教育プログラム研究部会の略称として使っています。この部会は、坪能会長の「現音・今昔」シリーズでも触れられている新しい創造教育を研究・実践・普及していく部会です。このブログには2回目の登場となります。この6月に川崎市下の某小学校の授業に4回もお邪魔をして、3年生5クラスで2回ずつ「音楽づくりワークショップ」を実施してきましたので、簡単にレポートいたしましょう。
[実施概要]
 今回参加メンバーは、私=松尾祐孝(ワークショップリーダー)と、EPCoMメンバーや音楽教育プログラムに関心の有る若手の作曲家や演奏家の方々で、都合のつく日に駆けつけてくださいました。生徒には事前に「何でも良いから自分の音を持ってくる」ことにしていて、その各自の音を活用しながら、各クラス2回ずつの授業で、ワークショップを行いました。
[1回目] アイスブレイク(全員で輪になって)〜自分の音の披露〜今日のテーマ発表「ロングトーンと同音連打」〜即興創作体験(松尾の指揮で全員一緒に即興音楽づくり)〜「ロングトーンと同音連打で音楽づくり」実践第1回(3or4グループに別れて:各ブループにサポーターが参加)〜相互鑑賞会(3or4グループをそれぞれのステージを鑑賞)
[2回目] アイスブレイク(全員で輪になって)〜テーマ再確認「ロングトーンと同音連打」&ヒントの提示「問いと答え」(応答性)「繰り返し」(反復生)〜「ロングトーンと同音連打で音楽づくり」実践第2回(3or4グループに別れて:各ブループにサポーターが参加)〜相互鑑賞会(3or4グループをそれぞれのステージを鑑賞)〜まとめ(鑑賞との連系の示唆)という進行で、各クラスとも楽しく盛り上がりました。
 サポーター初体験の若手音楽家の皆さんも洞察力と音楽性を遺憾なく発揮して、見事に生徒達をリードしていました。
[感想]
 専門的訓練を受けていない一般の小学生との音楽づくり体験は、今年1月の4年生授業に続いてやはり新鮮でした。「人間の持つ根源的な表現欲求と先入観に全く捕われない表現方法の刺激的な出会いが、世界で一つの自分たちの音楽ステージを生み出していく様」は正に芸術創造の原点であると、あらためて感じ入りました。前回に比べて学齢で1年半早い3年生1学期の生徒を対象に、前回と同じテーマで実践できたことは、我々にとって貴重な比較研究の機会となりました。今後、2年生と1年生でも実践を行う予定なので、それに向けての内容の策定が、EPCoMのこの夏の課題になります。
[追記]
 私=松尾祐孝が来る9月11日〜12日に京都大学で開催される「日本応用心理学会第77回大会」で[音楽づくりワークショップ]を行うことになりました。私のワークショップは11日に実施の予定です。
日本応用心理学会第77回大会ホームページhttp://www7b.biglobe.ne.jp/~dev-okinawa/jaap/top.htm
松尾祐孝担当ワークショップの紹介ページhttp://www7b.biglobe.ne.jp/~dev-okinawa/jaap/taikai-kikaku.html
 音楽家(それも作曲家)が心理学の学会に登場することはきっと稀なのだと思いますが、私なりに精一杯頑張ってこようと思っています。ワークショップ参加者にとって、「互いの音を聴き合い、互いの意見を聞き合い、無から世界に一つの自分たちの作品を創る」という行為は、高度な思考体験になります。発達心理学の面からも興味深い研究対象になり得るのではないでしょうか。子どもにとっても大人にとっても、このようなワークショップの体験は所謂「人間力・コミュニケーション能力」の育成に大きく寄与するものだということを、音楽教科の枠を超えて社会全体がもっと深く認識してほしいものです。作曲家はその領域に深く関われるのです。
 「音楽づくり」に興味が有りお時間も有る方は、是非とも京都にお越しください。学会ワークショップでお目にかかりましょう。

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