2009年12月3日木曜日

現音・今昔(9)事務局のこと “直(ちょく)さん”編

現音に80年の歴史があると、当然その歩みは事務局の苦労史になる。その歴史の中軸に位置し、四半世紀に亘り作曲家の団体を支えてくださったひとに「佐々木 直さん」がいた。素晴らしき怪女だった・・・ピースの両切りをくわえ、お酒を愛し、“能”はプロ級で、人間コンピューターだった。とにかくワープロの<保存>を使わないのだから恐れ入る。みんな頭のなかに入っていて、個人情報・会計簿・各種スケジュールなど、必要に応じてたちどころに出してくる。財政も厳しいはずだが、途中どのように工面したのか、お金の出し入れの最後はキチンと合わせることが出来た。交友関係も広く、演奏家の優秀な才能を現代音楽に結びつけ、コーディネーターの役もされ、現在の各種音楽会企画の基礎を築いてくださった。
 わがままな作曲家が相手のために口が悪い時もあり、煙たがる会員もいたが、音楽関係者には愛され頼られる存在だった。
 「東京現代音楽祭」の準備の頃、当時の事務局長が大会事務局で「直さんどうしてるのかな?事務所で倒れていたりして・・・」と冗談を言いながら、しかし音沙汰無いのを心配し、現音事務局に帰り道に寄った。本当に倒れていた。
 後遺症もあり入院生活を余儀なくされた。現音では感謝の意志を伝えるための資金が殆ど無かった。すると先輩作曲家が「T(直さん)基金」を立ち上げ、有志が出し合い、彼女に贈ることになった。残念ながらその後亡くなられた。直さんも凄かったが、いざという時の先輩作曲家の情熱には凄いモノがあった。
坪能克裕

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