2010年8月20日金曜日

ボストン便り (3) 〜会員:深澤舞


ハーバード大学の校舎や敷地が並ぶHarvard Squareは、学生さん向けのカフェやレストラン、お店や書店などが並ぶ、のどかで賑やかなエリアです。そのHarvard Squareには3つの映画館が点在していて、映画好きな人々にとっても楽しい界隈となっています。
 ひとつは5つのスクリーンを擁するHarvard Square Theatreという映画館で、新作映画や3Dの映画などもいち早く上映されます。新しい映画館かと思っていたのですが、オープンは1926年。たしかに、壁面に描かれた絵や看板の黒文字にも、積もってきた年月を感じます 。 (ロビーで販売されているドリンクやポップコーンの巨大さには、目を見張ります!) 今年、3D作品が公開されるようになってから、これまで以上にチケット売場で行列を見かけるようになりました。
 ハーバード大学が面する閑静な坂道にあるのが、Carpenter Center、ハーバードの視覚芸術センターの建物です。その地下階がHarvard Film Archiveとなっており、日替わりで様々な映画が上映されています。監督やカメラマンの方など、その映画の制作に関わったゲストの登場も多く、昨年の吉田喜重監督の特集上映では、吉田監督が、上映作品で主演されていた奥様の岡田茉莉子さんと来米されました。緑と打ち放しのコンクリートの共存が美しいこの建物は、コルビジェの北米唯一の、そして最晩年の設計です。
 そしてもうひとつが、今年120歳になるThe Brattle Theatreという味のある単館映画館。村上春樹さんのエッセイにも登場しているそうです。独自の視点から組まれる特集上映のほか、イベント、オークションなど様々なイベントが行われています。春先に黒澤明監督の生誕100年を記念しての特集上映がありましたが、数年前にはジブリの回顧上映もあったそうです。こちらはNPOとして運営されていて、寄附やメンバーの会費も大切な運営資金となっており、運営委員にはデイヴィット・リンチ監督も名を連ねるユニークな映画館です。
 設営、上映内容や企画も様々な映画館たちが、それぞれに街や人と密着しながら共存し、映画界を深く支えていく力強さを感じます。(Brattle Theatre独特の古く懐かしい空間、シネスイッチ銀座や渋谷シネマライズなど、日本でよく足を運んだ映画館が恋しくなる雰囲気です) 先日、Brattle Theatreからのメールで、上映のない期間、スペースを貸し出しているとのお知らせがありました。ここのスクリーンの手前には、ステージのようなスペースがあるのです。音響は難しそうですが、こうしたスペースでの音楽の企画も面白そうだなと、密かに想像をめぐらせています。
(2010.8.14.)

左上:Harvard Square Theatre  
http://cinematreasures.org/theater/484/
右上:Carpenter Center/Harvard Film Archive 
http://hcl.harvard.edu/hfa/
右下:The Brattle Theatre  
http://www.brattlefilm.org/
左下:ハーバード大学構内。休日はお散歩や観光の方たちで賑わっています。

0 件のコメント:

コメントを投稿