現音新人賞 本選会出場の小坂幸生です。
作品の“小さなメリヤス工場”は、英題を直訳すると、“熱気ムンムンの小さな繊維工場”と表現できます。祖父から父へ、そして私へと引き継がれた工場は、ミシンの音、クリーニング屋さんより大きな蒸気アイロンの音、ボタン付けの音、裁断する音等がいつも鳴り響き、日本最高の製品を自負するほどの、婦人服ニット製品の製造工程の音で満載です。
そのジーというような機械音、蒸気で製品をセットする音や臭いの感じ、裁断機の音、裁断された布地が落ちる音、ボタン付けのガチャガチャする音をどうやって皆様に理解されるか、感想をお聞きしたいところでもあります。譜面上ではその場面を想像できるような場面書きでいっぱいです。会場の皆様にその字幕テロップが流れればもっと楽しいかもしれないと思っていますし、現代音楽にありがちな暗い感じの様相を呈していません。
さて、今回の本選会はソロで演奏活動を実施されておられる強者揃いで、演奏されるだけで幸せですし、自分自身が聞いていても楽しくてワクワクしています。
私は15~16歳で一般の作曲家が目指す音楽専門の教育ではなく、いわゆるその大多数を占めるサラリーマンになるための学校教育を受けてきました。私は作曲家とは音大出身の方、あるいはお医者様のような学識者しかその存在を知りません。
サラリーマン、ましてや、夜中も働く原子力等の計装・制御のシステムエンジニアに作曲家はいないと信じ込んでいます。これが私の強みでもあり、一般の労働者が働く姿、大多数を占める、サラリーマンの憂鬱や楽しさを表現できる日本唯一の存在であると思っています。私はその大多数の労働者を代表する作曲活動を、今後も行っていこうと思っています。また、私はISAS(旧宇宙科学研究所)で惑星大気(CO2の濃度測定等)の研究をしていたこともあり、本選会で聞くことができる“太陽を背負う月”がどのように表現されているか興味津々です。
上記のことから、今回の現音新人賞のテーマが“人間性の再発見、再認識、再開発”であったことに共感し、作品を応募した次第です。
現音作曲新人賞入選:小坂幸生
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