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2010年12月29日水曜日

ボストン便り (5) 〜会員:深澤舞

 11月は久しぶりに日本に一時帰国しておりました。『あれから30年。』という演奏会ツアーで、ギターの佐藤紀雄さんとマンドリンの川口雅行さんが拙作を初演して下さったのです。今回、 佐藤紀雄さんからこの素敵な機会を授けて頂いたのですが、佐藤紀雄さんとの出逢いを作って下さったのは、2006年秋の現音の「器楽アトリエ」 。その時に初めて、佐藤紀雄さんとアンサンブル・ノマドのメンバーの方々が、新作を演奏して下さったのでした。この時の「器楽アトリエ」では、演奏会前に楽譜をスライドに映して、演奏者の皆様と先生方と壇上でお話をさせて頂き 、奏法や記譜に関してのご指導も頂けて、貴重な学びの機会を頂きました。今回の『あれから30年。』は名古屋から始まり、関西、四国を回って東京まで7公演のツアー。クラシック、ジャズ、武満徹氏の映画音楽の編曲版など盛りだくさんの素晴らしい演奏会で、拙作もリハーサルから2公演目まで聴かせて頂くことができました。

『あれから30年。』佐藤紀雄さん()、川口雅行さん()


 12月半ばには、サイトウ・キネン・オーケストラの演奏会を聴かせて頂きに、ニューヨークに参りました。3回の全く異なるプログラムのうちの、1日目と3日目だったのですが、1日目の後半、ブラームスの交響曲第1番と、3日目のブリテンの戦争レクイエムを、ご病気から復活された小澤征爾さんが指揮され、オーケストラの100名を越える方々、戦争レクイエムでは更に150名近い合唱が加わり、そして満席のカーネギーホールも全て一体となった、言葉に尽くせぬ尊い演奏会でした。クリスマス前には、ボストン3年目にして初めての、ボストン・ポップス・オーケストラのクリスマスコンサートへ。こちらは客席が円卓形式に変わり、パーティーのような賑やかなコンサート、終盤にはサンタクロースも登場して、ホール中でクリスマスソングの大合唱となりました。

サイトウ・キネン・オーケストラNY公演


ボストン・ポップス・オーケストラ Holiday Pops公演

 ボストンは先週、ずいぶん遅れての初雪でしたが、それ以来、ほぼ毎日降り続いて街が真っ白になっています。今年は現音のブログに参加させて頂き、遠くにいながらも、いつも楽しく現音の演奏会や、皆様の記事を読ませて頂いておりました。ありがとうございました。また、来年もどうぞよろしくお願いいたします。お体にお気を付けて、素敵な新年をお迎え下さいませ。


(2010.12.27.)

2010年10月13日水曜日

ボストン便り (4) 〜会員:深澤舞







 ボストンもすっかり秋が深まり、もうすぐ零下というところまで冷え込む日も出てきていますが、先週末は穏やかに晴れ、Harvard squareでオクトーバーフェストが催されました。各国の食べ物やこの時期旬のアップルサイダー(こちらでは発泡酒ではなく、絞りたてのアップルジュースのことを言うそうです)などの屋台のほか、服や雑貨や様々な出店が、広場を中心とした一帯に並びます。もともとはドイツ発祥のビールのお祭りのオクトーバーフェストですが、マサチューセッツ州では野外の飲酒は禁止。ということで、ビール売場の横には小さな柵で囲われたスペースがあり、角に立つ警官の方が見ている中(何だか落ち着いて飲んだり酔ったりもできなさそうですが・・)、この日だけは飲酒可のコーナーも用意されていました。

 そして、毎年特設ステージや路上では、1時間ごとに出演者が代わりながらライブ演奏が行われます。ライブ演奏は主にマーチングバンドの出演者が多く、目に眩しい秋空に、ブラスの音が高らかに響いていました。実は私は、マーチングバンドの生演奏をちゃんと拝見したことがなく、美しく列を成しながらパレードを行進していくようなイメージがあったのですが、このようなフェスティバルで見るマーチングバンドは、ジャズやキャバレー音楽に近い独特のアレンジに、各楽器のアドリブや踊りもあり、変幻自在な音のショーを見ているようでした。今年は2,3カ所でしか演奏を見なかったのですが、昨年1番注目のマーチングバンドはHungry March Bandというニューヨーク拠点のマーチングバンド、大きな人だかりと歓声に囲まれ、見ている人も一緒に踊り始め、大変な盛り上がりでした。

 お父さんの肩の上で自然とリズムをとり体を動かす小さな子の姿を見ながら、誰もがそれぞれ生まれ持っている音楽を改めて感じます。以前、電車の中で、黒人のお母さんと幼稚園くらいの女の子がリズムに乗せたことば遊びをしていたのですが、そのあまりのリズム感のよさに、車内中の注目を集めていたことがありました。自分の中に脈々と流れる懐かしい音たち、体に深く刻まれたリズム、マーチングバンドの音楽を背に、遥かに耳を傾けました。この日、ボストンの北の郊外では雪が散らついたそうで、今年の初雪ももう近そうです。




2010年8月20日金曜日

ボストン便り (3) 〜会員:深澤舞


ハーバード大学の校舎や敷地が並ぶHarvard Squareは、学生さん向けのカフェやレストラン、お店や書店などが並ぶ、のどかで賑やかなエリアです。そのHarvard Squareには3つの映画館が点在していて、映画好きな人々にとっても楽しい界隈となっています。
 ひとつは5つのスクリーンを擁するHarvard Square Theatreという映画館で、新作映画や3Dの映画などもいち早く上映されます。新しい映画館かと思っていたのですが、オープンは1926年。たしかに、壁面に描かれた絵や看板の黒文字にも、積もってきた年月を感じます 。 (ロビーで販売されているドリンクやポップコーンの巨大さには、目を見張ります!) 今年、3D作品が公開されるようになってから、これまで以上にチケット売場で行列を見かけるようになりました。
 ハーバード大学が面する閑静な坂道にあるのが、Carpenter Center、ハーバードの視覚芸術センターの建物です。その地下階がHarvard Film Archiveとなっており、日替わりで様々な映画が上映されています。監督やカメラマンの方など、その映画の制作に関わったゲストの登場も多く、昨年の吉田喜重監督の特集上映では、吉田監督が、上映作品で主演されていた奥様の岡田茉莉子さんと来米されました。緑と打ち放しのコンクリートの共存が美しいこの建物は、コルビジェの北米唯一の、そして最晩年の設計です。
 そしてもうひとつが、今年120歳になるThe Brattle Theatreという味のある単館映画館。村上春樹さんのエッセイにも登場しているそうです。独自の視点から組まれる特集上映のほか、イベント、オークションなど様々なイベントが行われています。春先に黒澤明監督の生誕100年を記念しての特集上映がありましたが、数年前にはジブリの回顧上映もあったそうです。こちらはNPOとして運営されていて、寄附やメンバーの会費も大切な運営資金となっており、運営委員にはデイヴィット・リンチ監督も名を連ねるユニークな映画館です。
 設営、上映内容や企画も様々な映画館たちが、それぞれに街や人と密着しながら共存し、映画界を深く支えていく力強さを感じます。(Brattle Theatre独特の古く懐かしい空間、シネスイッチ銀座や渋谷シネマライズなど、日本でよく足を運んだ映画館が恋しくなる雰囲気です) 先日、Brattle Theatreからのメールで、上映のない期間、スペースを貸し出しているとのお知らせがありました。ここのスクリーンの手前には、ステージのようなスペースがあるのです。音響は難しそうですが、こうしたスペースでの音楽の企画も面白そうだなと、密かに想像をめぐらせています。
(2010.8.14.)

左上:Harvard Square Theatre  
http://cinematreasures.org/theater/484/
右上:Carpenter Center/Harvard Film Archive 
http://hcl.harvard.edu/hfa/
右下:The Brattle Theatre  
http://www.brattlefilm.org/
左下:ハーバード大学構内。休日はお散歩や観光の方たちで賑わっています。

2010年7月21日水曜日

ボストン便り (2) 〜会員:深澤舞


7月4日は独立記念日の祝日で、毎年、街の中心を通るチャールズ川沿いで大きなイベントが開かれます。クライマックスは、日暮れと共に始まるボストン・ポップス・オーケストラの野外コンサートと、それに続く打ち上げ花火。「1812年序曲」の最後の大砲の音に、打ち上げ花火の音が加わり、今年も大歓声に包まれました。
 このチャールズ川が流れ込む海に面して、ICA Boston (The Institute of Contemporary Art/Boston)が建っています。海に広く面した外のテラスがカフェになっており、前回行ったときには、ガラスの建築と海とを背景に、トリオが演奏している最中でした。このカフェはアメリカで人気の高いシェフがプロデュースしているそうで、 企画展のない時にも、このカフェや演奏を目的にICAを訪れる人も多いそうです。
 ボストンに来る前は2年ほどロンドンにいたのですが、こちらは緑豊かな街の中心部にICAがありました。ピカソや同年代の画家、詩人たちが「半ばクラブのような形で」発足させたICA Londonに、今は劇場、フィルムセンター、ギャラリー、演奏会や講演会に使えるスペースなどが詰まり、イギリスらしい重厚な建物から様々な「現代」が発信されています。アートブックストアやバーのコーナーもあり、「クラブナイト」が催される週末は夜中まで開いているのです。ギャラリーとバーに続くスペースで現代音楽のコンサートが行われていたのですが、扉は演奏中も開かれたまま。その音世界に誘われ、ギャラリーで写真展を見ていた人やバーにいた人が(グラスをそのまま片手に)覗きにきて、思い思いに腰かけ、初演の場や作曲者との会話を楽しんでいました。自然に囲まれたひと続きの空間で、多様な「現代」の 形を自由に行き来する光景、そして、おいしいお茶やお酒を飲みに、公演を観に、写真集を買いに・・と出かけた先々に、現代音楽への扉のある光景が、これからの豊かな可能性を予感させてくれます。
 ボストンも夏らしいお天気が続いています。昨年は10月に初雪だったのですが、数ヶ月後にまた雪になるとは思えないような、満天の陽射しです。
(2010.7.19.)

2010年6月24日木曜日

ボストン便り (1) 〜会員:深澤舞


現音ブログをご覧の皆さま、こんにちは。作曲の深澤舞と申します。2006年の「器楽アトリエ」に初参加させて頂いてから日本を離れ、現音の演奏会もご無沙汰してしまっておりますが、遠方より楽しく拝見している現音ブログに、私も寄稿させて頂くこととなりました!ちょうど丸2年になるボストンの街のこと、今勉強している音楽院でのことなど、少しずつお届けさせて頂けたらと思っております。どうぞよろしくお願いします。
昨夏からBerklee音楽院で勉強しており、ボストン・シンフォニーホールやRed Soxのフェンウェイ球場からすぐの場所で、日々刺激を頂いています。この学校は作曲や演奏の他、映画音楽、電子音楽、エンジニアリング、マネージメント、音楽教育、音楽療法・・など専攻も幅広く、先生や学生さんのバックグラウンドも多様です。「どんな音楽をメインにやってきているの?」とは、普段よく交わされる会話ですが、クラシックだったり、ジャズだったり、自国の民族音楽だったりと、本当にさまざま。そうした会話を反映するように、学校では(そして街でも)アメリカで育まれたジャズ、アフリカの音楽、インド、中近東、アジアの音楽などに並んで、クラシック音楽も同じ存在感でごく自然に肩を並べ、弾く人も聴く人も自在に行き来して楽しんでいます。長音階と短音階は、ジャズでは数ある旋法の中の1つでしかなく、現代音楽の楽譜で目にとまる微分音はアラブの音階で当たり前に使われていて、音楽の縦糸と横糸が思いがけない繋がりを見せてくれます。自分なりの焦点に合いやすくなっていたメガネをふと外されるような感覚と、音楽という世界の広大さを、改めて体感する日々です。
写真はアメリカ最古の公園といわれるBoston Commonです。毎年夏になると、ロミオとジュリエットという白鳥のつがいが、子育てのためにこの湖にやってきます。2羽の到着の日は、毎年ジャズバンドが演奏して迎えるのだと記事になっていました。冬はマイナス20度まで下がるボストンも、今は初夏のよい季節がやってきています。
(2010.6.23.)