はじめまして。
この度、「現音作曲新人賞本選会」にて、拙作『葉桜』を初演して頂くことになりました、田口 和行と申します。
突然ですが、質問があります。
あなたは、花や木を見ていると、いつしか目の前にあるそれではなく、自分の中にある「それ」の方を見てしまっていたような経験はありませんか。
私が通っていた小学校に桜の木があるのですが、満開の桜よりも、どちらかというと、花と葉が混在する状態の方が記憶に残っています。
仕事へ行く途中に眺めていると、小学生時代の思い出がプレイバックされる訳でもないのに、「あの日の桜」の前に居るような感覚になることがあります。
もしかしたら、実物の「あの日の桜」ではなく、あの日、スケッチ大会で描いた桜の、その絵の具の色の印象かも知れません。
「あの日」がいつなのかも、はっきりと覚えていないのに…。
でも、これは後付けの言葉であって、その時点では、こんなことは少しも意識していないのだとも思います。
プライベートな例から飛躍し過ぎるかも知れませんが、このような記憶や精神世界、深層心理といった「庭」に育つ花や木を描きたいと思い、この『葉桜』を作曲しました。
これは、錯覚の果てに見える、真空に咲く花のようなものかも知れません。
そして、これはきっと日常生活の中で成長していきますので、私小説的な世界を唄うことで非日常性さえも導くシンガーソングライターのように作曲したいと思いました。
その過程が、画像のグラフです。
以上が、「人間性」というテーマから「日常」という言葉を連想した私の、短絡的で箱庭的な妄想です。
感じたままですので、残念ながら、根拠がありません。
あと数時間も経てば、あまりの恥ずかしさに卒倒してしまうことでしょう。
それでも、この曲が、あなたの「庭」に咲く花や木に気付いて頂けるきっかけとなってくれたら。
そんな祈りを込めて…。
最後になりましたが、今回初演して下さる4人の素敵な演奏家の皆さん、このような機会を与えて下さった現音の皆さん、そして、初演に立ち会って下さるあなたに。
心より、ありがとうございます。
現音作曲新人賞入選:田口和行